導入事例
「医療・介護・予防・生活支援・住まい」の5つのサービスが一体的に受けられる「地域包括ケアシステム」の構築が各地で進んでいる。2000年の介護保険制度スタート以前から、全国に先駆け、単独の小規模医療法人として「医療・介護・予防・生活支援・住まい」の一体的提供に取り組んできたのが、福岡県久留米市の「医療法人八十八会 ツジ胃腸科医院」だ。
医療法人八十八会は、有床診療所「ツジ胃腸内科医院」を核に、軽費老人ホーム、介護老人保健施設、認知症対応型共同生活介護施設(グループホーム)を運営。施設間の情報共有に、ICTを活用した多職種連携ネットワークを構築している。医療・介護・福祉の多職種間の情報共有ツールとして活用されているのが、在宅ケア業務支援システム「bmic-ZR」だ。システム導入後1年半あまりが経った医療法人八十八会の活動を紹介する。
医療法人八十八会が地域密着型の医療・介護・福祉の多施設を運営するようになったきっかけは、2000年の介護保険制度創設に伴い、規制緩和によって医療法人が軽費老人ホームなど福祉サービスを運営できるようなったことから。辻 吉保院長は、「介護保険制度がスタートする前の父(辻 吉彦理事長)の代から老人保健施設を開設するなど、医療・介護の連携を意識した法人運営に取り組んで来ました。単独の医療法人がケアハウスを開設したのは、全国的にも早い方だと思います」と述べ、医療・介護が連携した事業展開を強調する。
1997年の老人保健施設「明星苑コスモス」(現在は、介護老人保健施設「明星苑コスモス」に名称変更)を皮切りに、2004年に認知症対応型共同生活介護「グループホームこすもす」、2006年に「グループホームこすもすⅡ」を次々と開設。2008年には、ツジ胃腸内科医院と「ケアハウスコスモス21」が現在地に移転した。
施設間をICT活用の情報共有ネットワークでつなごうとしたきっかけは、「IT技術の進展によって当院でもレセプト処理が紙カルテから電子カルテに変わりました。その一方で、往診や各施設に回診に出かけた際に、ICTを活用した情報共有ツールがあったらと思ったからです」(辻院長)。また、介護現場では、限られた人員の中で介護記録作成などの事務処理に時間がさかれ、本来の介護に携わる時間が取りにくいとの声があり、まず介護現場でのICT導入を目指した。
施設間の医療・介護をつなぐ情報システムを探した辻院長。何社かの電子カルテ会社に問い合わせたものの、「医療情報システムには実績はあるが、介護情報システムの取り扱いはない。関心がない」「1億円以上のコストがかかる」「サーバーを独自に設置しなければならない」など、運営コストを含め、小規模な医療法人にとっては高額なコストに二の足を踏んだ。「システムに1億円もかけるならば、職員の処遇改善に回した方いい」と思っていた矢先に、たまたまパンフレットを見て出会ったのが、ソニーネットワークコミュニケーションズの在宅ケア業務支援システムbmic-ZRだった。
bmic-ZR導入のポイントは、「安価であることです。何度かシステムのバージョンアップも行われており、システムに拡張性と信頼性を感じていました」と述べる辻院長。結果的に、他社では1億円以上を超えると言われた導入コストが1千万円以内で済み、ユーザー側の要望を十分に採り入れた運用提案も行われ、導入後のサポートも厚かったという。
医療法人八十八会の職員は、非常勤職員を含め約130名。bmic-ZRを使って、通所者30名、入所者70名、グループホーム入所者36名、ケアハウス入所者30名、辻医院入院患者18名の情報を取り扱う。bmic-ZR導入当初は、新しいシステムに職員からの不満の声もあったが、運用が定着していくにつれ職員の抵抗感は徐々になくなってきた。現在ではほぼすべての職員が毎日、bmic-ZRを使って情報の記録、共有を行っている。
システム導入で劇的に変化したのが、各施設からの指示・要請に対して素早く対応できるようなったことだ。辻院長は、「今まで、患者さんや利用者さんのバイタルデータについては、ファクシミリを通じて連絡していました。bmic-ZRを使うようになってからは、直ぐに見ることができ、しかも画像データも添付され具体的な情報を見ることができるので、直ぐに現場への指示が出せるにようになりました」「ぱっと見て、ぱっと指示が出せる“ワンステップ”システムで、施設間の情報共有がスムーズになりました」と、導入メリットを語る。
bmic-ZR導入によって、現場から好評なのが、「指示のラベル出し」だ。従来、看護職員は、患者・利用者の状態についてファクシミリや電話で院長に伝え、院長からの指示を受けていた。それが、状態をタブレット端末で画像に撮りコメントと共にbmic-ZRを通じて院長に送信。院長はそのコメントや画像を診て指示を出し、各施設では指示をラベルプリンターでシール印刷してカルテに貼り付けるというもの。これは、「口頭指示だけでは、投薬などの間違いがあって心配」「レセプト審査を考慮して、指示の再現性や保存が必要」など辻院長や、指示を受ける職員からの要望を受け、運用の工夫とシステムへの機能追加により実現したものだ。
利用者や患者の状態を院長に送信し、指示を仰ぐ看護職員からも、「口頭で状態を先生に伝えるよりも、画像で具体的な状態を診ていただくことができ、先生からより具体的な指示を受けることができるので、重宝しています」(看護職員の永富咲子さん、溝上貴子さん、松本佑子さん)と、現場では好評だ。
八十八会に導入されて1年半あまりが経ったbmic-ZR。その間も、ソニーネットワークコミュニケーションズの担当者が頻繁に現場を訪問して、システム改善の要望を聞いている。
取材した日も、辻院長から「動画も送信できるようになったら、施設入所者のリハビリ効果が歩行の動画によって確認でき、また、嚥下障害への対応も動画によりスムーズに指示できるのではないか」との要望が出された。システム改良に向けた現場との親密なコミュニケーションによって、進化する在宅ケア業務支援システムbmic-ZRである。
所在地 | 福岡県久留米市国分町1163-1 |
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開設 | 平成5年11月 |
URL | https://www.tsuji-i.com/ |
概要 | 辻 吉彦氏が1973年に「ツジ胃腸内科医院」を開設。1997年の老人保健施設「明星苑コスモス」開設を皮切りに、久留米市内に医療・介護施設を次々と開設。現在、有床診療所(19床)を核に、軽費老人ホーム「ケアハウスコスモス21」、介護老人保健施設「明星苑コスモス」、認知症対応型共同生活介護施設「グループホームこすもす」及び「グループホームこすもすⅡ」を運営。 |
bmic-ZRをぜひ、ご検討ください
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